東雲総合法律事務所:東京都中央区日本橋の弁護士事務所東雲の由来

法律の窓

豊洲市場の土壌汚染

2016.10.05更新

いや~9月から10月にかけては、本当に雨が多いね。道路の脇から土が溶けて流れてきそうだよ。
じゃあ、流れてきた土を、例の豊洲市場の空洞部分に入れればいいじゃない。
お、タイムリーな話題だね。あれって、法律的にはどんな問題があるんだろう。
うーん、なかなか専門的な気がするわね。おとなしく日本橋博士に聞いてみましょうか。
問題点をおさらいしよう。発端は、かねてより予定されていた築地市場の豊洲への移転計画が延期されたこと。その理由の一つとして、移転先である豊洲では、地下からの有毒物質を防ぐための盛り土が十分されてなかったと判明したことが挙げられている。豊洲には、以前、東京ガスの工場があり、その際の調査で基準値を大きく上回るベンゼン、シアン、ヒ素が検出された、ということじゃよ。
ひえぇ、そんなところでお魚の競りをするなんて、怖いわ。盛り土が全体の3分の1もされていなかったってニュースで言っているし。
この問題をテーマに、法律的な問題を考えてみよう。まず、土壌汚染対策法上、「有害物質使用施設」に該当する施設の敷地の所有者や占有者は、施設廃止時に、行政に対し、汚染状況を調査して、行政から指示があれば、汚染の除去を行わなければならないのだよ。
じゃあ、東京ガスが、汚染の除去をしなければならなかったというわけ?
ところが、実際には、東京都が盛り土をしたけど、それが不十分で地下空洞があいていた、というわけだ。そもそも、土地に環境汚染物質が含まれているような場合、その土地の売主が「瑕疵担保責任」を負担するのが、民法上の決まりじゃ。
それじゃあ、東京都は本当は負担しなくてよい費用を負担したってわけ?
いいや、売買契約で、民法とは異なる取り決めをすることもできるのじゃよ。瑕疵担保責任を買主が負担する、つまり、土地の汚染除去費用は買主である東京都が負担する、という契約も有効なんじゃ。
なんか、いろいろ捩じれている印象ね。東京都が無理やりことを進めようとしていたことが、ここに現れている気がするわ。
それに、行政上の責任(報告、汚染除去)と、民事上の責任(瑕疵担保責任)とは分けて考えなきゃいけないね。
なんにせよ、豊洲移転問題は、法律面以外の政治的側面でも問題山積みじゃ。都民の負担ができるだけ少なくなるよう、小池都知事には頑張ってもらいたいのう。